執筆: 家づくりナビ編集部
編集・確認: 株式会社ローカルマーケティングパートナーズ (最終確認: )
土地活用で節税する方法|相続税・固定資産税・所得税の仕組み別解説
土地を所有しているだけで、毎年の固定資産税や将来の相続税が重くのしかかります。更地のまま放置すると住宅用地特例が適用されず、固定資産税は建物がある場合の最大6倍になるケースもあります。一方、土地を何らかの形で活用すれば、相続税・固定資産税・所得税の3つの税目で節税効果を得られる可能性があります。土地活用の選択肢全体を俯瞰したい方は土地活用アイデア15選が参考になります。
本記事では、税目ごとの仕組みを整理したうえで、賃貸アパート・駐車場・トランクルームなど活用方法別に節税効果の大きさを比較します。
相続税の節税 — 評価額を下げる仕組み
土地活用で相続税を抑えるには、相続時の財産評価額を下げるのが基本です。現金や更地で持つより、建物を建てて賃貸に出した土地のほうが評価額が低くなる仕組みが税法に組み込まれています。
貸家建付地評価による減額
更地にアパートやマンションを建てて賃貸に出すと、その土地は「貸家建付地」として評価されます。貸家建付地の評価額は、自用地評価額から借地権割合と借家権割合(全国一律30%)と賃貸割合を乗じた金額を差し引いて計算します。
たとえば自用地評価額が5,000万円、借地権割合が60%(路線価図で確認)、賃貸割合100%(満室)の場合、評価額は5,000万円 -(5,000万円 x 0.6 x 0.3 x 1.0) = 4,100万円となり、約18%の減額です。借地権割合が高い都市部ほど節税効果が大きくなります。
さらに、建物自体も固定資産税評価額で評価されるため、建築費の50〜60%程度の評価にとどまるのが一般的です。現金1億円で賃貸アパートを建てた場合、建物評価額は5,000〜6,000万円程度になり、現金のまま持つよりも4,000〜5,000万円の評価圧縮が見込めます。アパート経営の具体的な収支感を掴みたい場合は土地活用でアパート経営は本当に有利かで収支モデルを確認してください。
小規模宅地等の特例
被相続人が事業用または居住用に使っていた宅地は、小規模宅地等の特例により評価額がさらに減額されます。
貸付事業用宅地等(アパート敷地など)の場合、200平方メートルまでの部分について評価額が50%減額されます。特定事業用宅地等(自ら事業を行う場合)は400平方メートルまで80%減額です。
ただし、相続開始前3年以内に新たに貸付事業を開始した宅地は、特例の対象外になる場合があります。相続税対策として直前にアパートを建てるだけでは適用が認められないため、計画は早めに動かす必要があります。相続対策の全体像は土地活用で相続対策で整理しています。
活用方法別の相続税評価額の違い
| 活用方法 | 土地の評価区分 | 評価減の目安 | 小規模宅地等の特例 |
|---|---|---|---|
| 更地(未利用) | 自用地 | なし | 適用なし |
| 賃貸アパート | 貸家建付地 | 15〜21%減(借地権割合による) | 貸付事業用:200平方メートルまで50%減 |
| 駐車場(舗装あり) | 自用地 | なし | 貸付事業用の対象になり得る |
| トランクルーム(コンテナ) | 構築物の有無で判定 | 限定的 | 構築物あれば貸付事業用の対象候補 |
| 賃貸併用住宅 | 居住部分は自用地、賃貸部分は貸家建付地 | 賃貸部分のみ減額 | 居住部分は特定居住用330平方メートル80%減の可能性 |
固定資産税の節税 — 住宅用地特例の活用
固定資産税の節税で重要なのは「住宅用地特例」の適用です。住宅が建っている土地は、200平方メートルまでの小規模住宅用地で課税標準が6分の1に、200平方メートルを超える部分(一般住宅用地)で3分の1に軽減されます。
更地のままでは特例の適用がなく、評価額がそのまま課税標準になります。仮に固定資産税評価額3,000万円の土地を更地で放置した場合と、アパートを建てた場合を比較すると、固定資産税額は年間約35万円の差が生じるケースがあります。固定資産税の仕組みと更地・アパート・駐車場の税額比較は土地活用で固定資産税はどう変わるかで詳しく試算しています。
活用方法ごとの固定資産税への影響
賃貸アパートや賃貸併用住宅を建てれば住宅用地特例が適用されるため、固定資産税は大幅に軽減されます。一方、駐車場やトランクルーム、太陽光発電は「住宅」ではないため特例の対象外です。駐車場を検討している場合は駐車場経営の費用と収益の目安を確認し、固定資産税が下がらない前提で収支を組む必要があります。
| 活用方法 | 住宅用地特例 | 建物の固定資産税 | トータルの税負担 |
|---|---|---|---|
| 更地 | 適用なし | なし | 高い(土地の税額がフル) |
| 賃貸アパート | 適用あり(最大6分の1) | 発生(建物評価額に課税) | 低い(土地が大幅軽減) |
| 駐車場 | 適用なし | なし | 高い(更地と同等) |
| トランクルーム | 適用なし | コンテナに償却資産税 | 中程度 |
| 賃貸併用住宅 | 適用あり | 発生 | 低い |
注意すべきは、建物を建てれば建物自体への固定資産税が新たに発生する点です。ただし、新築の場合は3〜5年間の固定資産税減額措置(長期優良住宅は5年)があるため、この期間中は土地と建物のトータルで見ても税負担が軽くなるケースが多いです。
所得税の節税 — 経費計上と損益通算
土地活用で賃貸収入を得ると不動産所得が発生しますが、必要経費を差し引くことで課税所得を圧縮できます。特に建物の減価償却費は、実際に現金が出ていかないにもかかわらず経費として計上できるため、帳簿上の赤字をつくりやすい特性があります。
減価償却費による節税
建物は法定耐用年数に応じて毎年減価償却費を計上できます。木造アパートなら耐用年数22年、鉄骨造(骨格材の厚さ3mm超4mm以下)なら27年、RC造なら47年です。
たとえば建築費5,000万円の木造アパートの場合、定額法で年間約227万円(5,000万円 / 22年)の減価償却費を経費に計上できます。家賃収入が年間400万円、その他経費(管理費・修繕費・保険料・借入金利息など)が年間120万円とすると、不動産所得は400万円 - 120万円 - 227万円 = 53万円となり、減価償却費がなければ280万円だった所得を大幅に圧縮できます。
損益通算の仕組み
不動産所得が赤字になった場合、その赤字は給与所得や事業所得と損益通算できます。所得税率が20%の給与所得者であれば、不動産所得の赤字100万円で所得税が約20万円、住民税が約10万円の計30万円の還付や減額を受けられます。
ただし、土地の取得に要した借入金の利子に相当する部分は損益通算の対象外となるため、建物取得分と土地取得分の借入金を区分して管理する必要があります。
青色申告特別控除
不動産賃貸を事業的規模(概ね5棟10室基準)で行う場合、青色申告承認を受ければ最大65万円の特別控除が適用されます。10室に満たない場合でも10万円の控除は受けられるため、規模に関わらず青色申告の届出を行うのが基本です。
活用方法別の節税効果比較
3つの税目を横断して、活用方法ごとの節税効果を整理します。
| 活用方法 | 相続税 | 固定資産税 | 所得税 | 初期投資 | 収益性 |
|---|---|---|---|---|---|
| 賃貸アパート | 効果大(貸家建付地+小規模宅地) | 効果大(住宅用地特例) | 効果大(減価償却+損益通算) | 高い | 高い |
| 賃貸併用住宅 | 効果中〜大 | 効果大 | 効果中 | 中〜高 | 中 |
| 駐車場(月極) | 効果小 | なし | 効果小 | 低い | 低〜中 |
| トランクルーム | 効果小 | なし | 効果中 | 中 | 中 |
| 太陽光発電 | 効果小 | なし | 効果中(設備の減価償却) | 中 | 中 |
節税効果だけで見ると賃貸アパートが圧倒的に有利ですが、空室リスクや修繕費の負担も大きくなります。節税額の大きさと経営リスクは比例する関係にあるため、手残りキャッシュで比較するのが正しい判断軸です。
節税目的の土地活用で失敗しやすいパターン
節税を動機に土地活用を始めること自体は合理的ですが、「節税になるから」という理由だけで採算性を精査しないまま着手するケースで失敗が起きています。
1つ目は、相続税の評価減だけを見てアパートを建てたものの、賃貸需要が乏しい立地で空室率が50%を超え、借入金の返済が家賃収入を上回るケースです。評価額が下がっても事業として赤字が続けば、相続の前に資金繰りが行き詰まります。
2つ目は、小規模宅地等の特例を見込んで貸付事業を始めたが、相続開始までの期間が3年未満で特例が適用されなかったケースです。相続税対策は時間軸を逆算した計画が前提になります。
3つ目は、損益通算による所得税還付を期待してサブリース契約を結んだものの、数年後に賃料減額を提示され、当初の収支計画が破綻するパターンです。サブリース契約は借地借家法の適用を受けるため、賃料の不変は保証されません。
こうした失敗を避けるには、節税の仕組みを理解したうえで、複数の活用プランを並べて収支と税効果を同時に比較する進め方が堅実です。
節税対策のスケジュール感
相続税対策としての土地活用は、実行から効果が発揮されるまでにタイムラグがあります。建物の建築には企画・設計・施工で12〜18ヶ月、入居者募集から満室稼働までさらに3〜6ヶ月かかるのが一般的です。さらに小規模宅地等の特例では、相続開始前からの貸付実績が要件になる場合があります。
つまり、相続が発生してから慌てて動き始めても間に合わない可能性が高いということです。固定資産税の節税は建物完成翌年から効果が出ますが、相続税の節税効果を確実に得るには、少なくとも4〜5年前から計画を始めるのが安全です。
所得税の節税は賃貸事業を開始した年から効果が出ます。初年度は登記費用・不動産取得税・仲介手数料などの初期費用も経費にできるため、帳簿上の赤字が大きくなりやすく、損益通算による還付額も大きくなる傾向があります。
よくある質問
更地で駐車場にしても固定資産税は安くなりますか。
駐車場は住宅用地特例の対象外のため、更地と同じ税率が適用されます。固定資産税を下げたい場合は、住宅を建てて住宅用地特例を適用させる必要があります。ただし、駐車場経営は初期投資が小さく、転用の自由度が高いメリットがあるため、税負担だけで判断せず収支全体で比較してください。
相続税対策で建てたアパートを相続後すぐに売却しても問題ありませんか。
法律上は売却可能ですが、税務署が「租税回避目的」と判断すれば小規模宅地等の特例や貸家建付地評価が否認されるリスクがあります。相続後すぐに事業をやめる前提の土地活用は、税理士と相談したうえで慎重に判断してください。
土地活用の節税相談は誰にすればよいですか。
税務面は税理士、不動産の活用方法はハウスメーカーや土地活用コンサルに相談するのが基本です。両方を一度に比較したい場合は、複数社から提案を受けて税理士にセカンドオピニオンを依頼する流れが効率的です。税理士費用は個別相談で1〜3万円程度が目安です。
法人化すると節税効果は変わりますか。
個人の所得税は累進課税(最大45%+住民税10%)ですが、法人税の実効税率は約30%前後で頭打ちになります。課税所得が900万円を超えるあたりから法人化の税メリットが出てくるのが目安です。ただし法人設立・維持コストや社会保険の負担増もあるため、税理士に損益分岐点を試算してもらってから判断してください。
出典
- 国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」
- 国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
- 国税庁「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」
- 総務省「固定資産税の概要」