土地活用 DRAFT

アパート経営の収益と利回り(表面・実質・FCRの違い、25年シミュレーション付き)

アパート経営の収益はどう決まるか

アパート経営の収益と利回りを正しく評価するには、提案書に載る「表面利回り○%」の数字をそのまま受け取らないことが出発点です。遊休地や相続した土地の活用としてアパート経営を検討する方が増えていますが、ハウスメーカーの提案書が示す利回りは満室前提・経費未算入の「最も楽観的な数字」であることが大半です。

アパート経営の収益構造は、家賃などの総収入から運営経費と借入金返済を差し引いた残額、つまり手残り(キャッシュフロー)で測ります。分解すると次の構造になります。

税引前キャッシュフローからさらに所得税・住民税を差し引いたものが、実際に口座に残る金額です。不動産所得は給与所得と合算して課税されるため、本業の年収が高い方ほど税負担は重くなり、手取りは提案書の見た目よりさらに減ります。

収益の良し悪しを判断するために使われるのが「利回り」ですが、利回りにはいくつかの種類があり、数字の持つ意味がそれぞれ異なります。

利回りの種類と計算方法(表面・実質・FCR)

アパート経営で登場する利回りは大きく3つに分かれます。提案書や広告を読むとき、その数字がどの利回りなのかを確認するだけで判断力が変わります。

表面利回り(グロス利回り)

年間の家賃収入を物件の取得価格で割った値です。

表面利回り = 年間家賃収入 / 物件取得価格 x 100

たとえば年間家賃収入600万円、物件取得価格5,000万円なら表面利回りは12%。ハウスメーカーや不動産会社の提案書で目にする数字は大半がこの表面利回りです。空室も経費も含まないため「満室で何もトラブルがない前提の理想値」に過ぎません。

実質利回り(ネット利回り / NOI利回り)

年間の家賃収入から運営経費を差し引いた純収益(NOI: Net Operating Income)を物件取得価格で割った値です。

実質利回り = (年間家賃収入 - 年間運営経費) / 物件取得価格 x 100

同じ物件で年間運営経費が150万円なら、実質利回りは(600万 - 150万)/ 5,000万 = 9%。空室率10%を織り込むと家賃は540万円に落ち、実質利回りは(540万 - 150万)/ 5,000万 = 7.8%に下がります。表面利回り12%と実質利回り7.8%のあいだに4ポイント以上の差が出ることは珍しくありません。

FCR(総投資利回り)で物件力を測る

FCR(Free and Clear Return)は実質利回りの計算を一歩進めて、物件取得時の諸費用(登記費用・不動産取得税・仲介手数料・保険料など)まで分母に含めた指標です。

FCR = NOI / (物件取得価格 + 取得時諸費用) x 100

取得時諸費用を500万円とすると、上の例ではFCR =(540万 - 150万)/ (5,000万 + 500万) = 7.1%。借入条件に左右されず「投じた資金に対する純粋な物件の稼ぐ力」を表すため、物件同士を比較する場面で有効です。

表面利回りは広告の集客力、実質利回りは年間の運用力、FCRは投資対象としての物件力、とそれぞれ測る対象が異なります。提案書を読むときは「どの利回りで何%なのか」を必ず確認してください。

アパート経営の利回り相場(最新データ)

利回りの種類と計算方法を理解したうえで、現在のアパート経営における利回り相場を確認します。

新築アパートの利回り目安

新築一棟アパートの表面利回りは全国平均で8%前後(2025年4-6月期の不動産投資マーケットデータ)です。実質利回りに換算すると5-6%が一つの目安となり、3%を下回ると経費や空室の変動を吸収できず赤字に転落するリスクが高まります。

地域別に見ると差が大きく、東京都内は土地価格の高さから表面利回り5-7%にとどまりやすい一方、地方は表面利回り10%超の物件も出回ります。ただし地方の高利回りには空室リスクが織り込まれていない場合があるため、利回りの数字だけで投資判断をすると危険です。

不動産投資家調査に見る期待利回り

機関投資家を対象とした日本不動産研究所の「不動産投資家調査」(第53回、2025年10月時点)では、賃貸住宅ワンルームタイプの期待利回りが以下のように報告されています。

エリア期待利回り(ワンルーム)
東京・城南(目黒区・世田谷区等)3.7%
横浜4.3%
大阪4.3%
名古屋4.5%
福岡4.5%
京都4.6%
神戸4.7%
札幌 / 仙台 / 広島5.0%

この数字は機関投資家がリスクを織り込んだうえで「この利回りなら投資に値する」と判断する水準です。東京城南で3.7%、地方中核都市で5.0%という数字は、個人がハウスメーカーの提案で目にする「表面利回り10%超」とはかけ離れています。プロの水準と提案書の数字のあいだにこれだけの差があるということは、提案書の利回りがリスクを過小評価している可能性を示唆しています。

収支シミュレーション(初期投資5,000万円の例)

木造2階建て・6戸・1K(1戸あたり25平方メートル)のアパートを想定し、初期投資5,000万円の収支を試算します。

前提条件

項目数値
建築費4,500万円(坪単価55万円 x 延床約82坪)
諸費用(登記・保険・設計等)500万円
投資総額5,000万円
自己資金1,000万円
借入額4,000万円
借入金利2.5%(固定)
返済期間25年(元利均等)
家賃設定6万円/戸(共益費込)

年間収支(1年目)

項目金額
家賃収入(満室時)432万円(6万円 x 6戸 x 12ヶ月)
空室損失(空室率10%)-43万円
有効総収入389万円
管理委託費(家賃の5%)-19万円
修繕積立金-25万円
固定資産税・都市計画税-35万円
火災保険料-8万円
原状回復費(退去時)-15万円
雑費(広告費・共用部光熱費等)-10万円
運営経費合計-112万円
NOI(営業純利益)277万円
借入金返済(年額)-214万円(月約17.8万円)
税引前キャッシュフロー63万円

1年目の税引前キャッシュフローは年間63万円、月あたり約5.3万円です。自己資金1,000万円に対する投資利回り(CCR: Cash on Cash Return)は6.3%。表面利回り12%の提案書を見た印象と比べると、手残りの控えめさが目につくでしょう。

FCR = 277万(NOI)/ 5,000万(投資総額)= 5.5%。借入前の物件力としては及第点ですが、ここからローン返済と税金が引かれる点を見落とすと判断を誤ります。

25年間の累計キャッシュフロー

アパート経営は単年の利回りだけでなく、長期で見た累計キャッシュフローが重要です。家賃下落・空室率上昇・大規模修繕を織り込んで25年間を試算します。

期間想定家賃/戸空室率NOI概算年間CF概算備考
1-5年目6.0万円10%277万円63万円新築プレミアムあり
6-10年目5.7万円12%248万円34万円家賃5%下落・空室率上昇
11-15年目5.4万円15%205万円-9万円外壁塗装200万円を按分
16-20年目5.1万円18%166万円-48万円設備更新・屋根補修
21-25年目4.8万円20%128万円-86万円給排水管更新

25年間の累計キャッシュフローは約マイナス230万円になります。1-5年目こそ年間63万円の黒字ですが、築10年を過ぎると家賃下落と修繕費の増加でキャッシュフローが圧縮され、後半は持ち出しが発生する計算です。

もちろん、これは1棟目のローン完済までの試算であり、25年後に土地と建物(残存価値)が手元に残ります。「25年ローンを返し終われば家賃がまるごと収入になる」という長期戦略は成立しますが、その25年間を乗り切るだけの手元資金とリスク耐性が問われます。

収支シミュレーションの前提条件は建築会社ごとに異なります。想定家賃・空室率・修繕計画・建築費を並べて比較するには、複数社から建築プランを取り寄せるのが確実な方法です。土地活用プラン一括請求(無料)を利用すれば、同じ土地条件で各社の収支シミュレーションを横並びで比較できます。

収益を圧迫する5つのリスク要因

上記のシミュレーションでも一部織り込みましたが、アパート経営の収益を下振れさせる主なリスクを整理します。

空室リスク(900万戸時代の現実)

総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は900万戸、空き家率は13.8%で過去最高を更新しました。このうち約半数は賃貸用の空き物件です。貸家の新規供給も続いており、国土交通省の建築着工統計調査では2024年の貸家着工戸数は342,044戸(前年比0.5%減)と、減少幅はわずかにとどまっています。

空室率が10%から20%に上昇すると、先ほどのシミュレーションでは有効総収入が389万円から346万円に落ち、税引前キャッシュフローは20万円まで圧縮されます。入居者募集のたびに広告費(家賃1-2ヶ月分)がかかり、長期空室にはフリーレント(1-2ヶ月の家賃無料)で対応せざるを得ない場面もあります。

空室リスクへの耐性は立地が大部分を決めます。駅徒歩10分以内や大学・病院の近くであれば空室率を10%以下に抑えやすい一方、人口減少エリアでは築10年を過ぎると入居者確保自体が困難になるケースがあります。

家賃下落リスク

賃貸住宅の家賃は築年数の経過とともに下がります。築10年で5-10%程度の下落は一般的で、新築時の家賃6万円が築10年で5.7万円、築20年で5.1万円になる想定は決して悲観的ではありません。加えて、周辺に競合物件が増えると家賃を下げなければ入居者が確保できない状況も生まれます。

修繕リスク

木造アパートは築10-15年で外壁塗装(150-250万円)、築15-20年で給湯器の一斉交換(6戸で60-90万円)、築20年前後で屋根の葺き替えや給排水管の更新が発生します。大規模修繕は1回あたり200-400万円の支出になり、修繕積立金でまかなえない場合は自己資金の追加投入が必要です。

設備の故障も築年数とともに増加します。エアコン交換(1台8-12万円)が6戸分同時に発生すると一度に50-70万円の支出です。こうした突発的な出費に備える手元資金を確保しておかないと、借入で補填する悪循環に陥ります。

金利上昇リスク

変動金利で借り入れている場合、金利が1%上昇すると返済額が直接増加します。4,000万円の借入で金利が2.5%から3.5%に上がると、年間返済額は214万円から約237万円へ23万円増加します。シミュレーションの税引前キャッシュフロー63万円が40万円に減り、空室率の上昇と重なるとキャッシュフローが赤字に転落します。

日本銀行の金融政策正常化が段階的に進むなか、「低金利がこのまま続く」前提の収支計画は危険です。金利2%上昇のストレスシナリオでも手残りがプラスを維持できるかどうかを事前に確認しておくべきです。

災害リスク

地震・台風・水害による建物の損壊は、火災保険と地震保険でカバーできますが、保険でまかなえない損害や、復旧期間中の家賃収入停止は自己負担です。ハザードマップで浸水想定区域に該当する土地でのアパート建築は、保険料の上昇と入居者敬遠の二重のコスト増加を覚悟する必要があります。

複数プラン比較が収益を守る

アパート経営の判断において「1社の提案だけで決めない」ことは鉄則です。同じ土地条件でも建築会社によって建築費に500-1,000万円の差が出ることがあり、この差は25年間のキャッシュフローに換算すると数百万円の違いになります。

提案書の利回りだけを見て高い方を選ぶのではなく、想定家賃の根拠(周辺相場との比較で妥当か)、空室率の前提(楽観的な5%か堅実な10-15%か)、修繕積立金の計上額(実態に即した水準か)を横並びで比較するのが現実的な進め方です。3社以上のプランを取り寄せると、どの提案が保守的で、どの提案が楽観的かが自然と見分けられるようになります。

建築費の差額がそのまま借入額と返済負担に跳ね返る点も見逃せません。建築費が500万円安ければ、25年間で支払う利息総額が約150万円減ります。利回りを0.数ポイント改善するために運営の工夫を重ねるよりも、建築費の適正化のほうがキャッシュフローへの影響は大きい場合があります。

土地活用としてアパート以外の選択肢(駐車場経営太陽光発電など)と並行して検討する場合も、建築プランの比較が基準になります。相続した土地の活用方法を整理したうえで、収支シミュレーションの数字で最終判断を下すのが堅実な手順です。

建築プランと収支シミュレーションの比較は、土地活用一括プラン請求(無料)で複数社から同時に取り寄せられます。同じ土地条件で各社の想定家賃・空室率・建築費を横並びにできるため、提案の「楽観度」を見極める材料になります。

よくある質問

アパート経営の利回りの最低ラインはどのくらいですか

実質利回りで5%以上が安定経営の目安とされ、3%を下回ると空室率の上昇や金利変動でキャッシュフローが赤字に転落するリスクが高まります。ただし「利回り○%なら安全」と一律に判断できるものではなく、借入比率・金利条件・エリアの賃貸需要によって最低ラインは変わります。日本不動産研究所の不動産投資家調査では機関投資家の期待利回りが東京城南で3.7%、地方中核都市で5.0%となっており、この水準がプロの判断基準の一つの参考になります。

アパート経営で年収1,000万円は可能ですか

年収1,000万円(税引前の不動産所得)を1棟で達成するのは現実的ではありません。実質利回り5%の物件で年間NOI 1,000万円を得るには投資総額2億円規模が必要で、通常は複数棟を段階的に取得していくスケール型の戦略になります。最初の1棟で年間キャッシュフローを安定させ、その実績をもとに2棟目の融資を引き出すのが一般的な拡大パターンです。いきなり年収1,000万円を目標にして高レバレッジの投資に踏み込むと、キャッシュフローがわずかに下振れしただけで返済が回らなくなる危険があります。

新築アパートと中古アパート、利回りはどちらが有利ですか

中古アパートは購入価格が安いぶん表面利回りが高く出ますが、修繕費の増加・空室率の上昇・融資条件の悪化(金利が高い、返済期間が短い)がデメリットです。新築は建築費が高く利回りが低くなりがちですが、修繕費が当面少なく入居者募集も有利です。築10年以内の物件は新築と中古の中間的なポジションで、残存耐用年数が長く融資も比較的つきやすいため選択肢に入ります。「利回りの数字」だけで比較するのではなく、修繕費の見積もり・融資条件・賃貸需要の3点を加えた総合判断が必要です。

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出典

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