執筆: 家づくりナビ編集部
編集・確認: 株式会社ローカルマーケティングパートナーズ (最終確認: )
不動産の相続税計算方法|評価額・基礎控除・特例をわかりやすく解説
不動産の相続税計算で押さえるべき3つのポイント
親から土地や建物を相続したとき、「相続税がいくらかかるのか」を事前に把握しておくことは、活用方針を決めるうえでも欠かせません。不動産の相続税計算では、次の3つのポイントを順に理解することが重要です。
- 不動産の相続税評価額(路線価・倍率方式)
- 基礎控除を超えるかどうかの判定
- 小規模宅地等の特例など、使える減額措置の確認
国税庁が2024年12月に公表した「令和5年分 相続税の申告事績の概要」によると、相続税の課税割合は9.9%でした。被相続人(亡くなった方)157万6,016人のうち15万5,740人が課税対象で、課税財産のうち土地が占める割合は全体の約31.5%です。かつて「資産家だけの問題」と思われていた相続税は、都市近郊に不動産を持つ一般家庭にも関係するものになっています。
出典:国税庁「令和5年分 相続税の申告事績の概要」(2024年12月公表、2026年10月9日確認)。土地の構成比は相続税額のある申告書(修正申告書を除く)の財産額に基づく数字で、全国の相続財産すべての構成比ではありません。
この記事では、不動産の相続税を自分で計算するための手順を、具体的なシミュレーションを交えながら解説します。
ステップ1: 不動産の相続税評価額を求める
相続税の財産評価は相続開始時の時価が原則で、土地・家屋は国税庁の財産評価のルールに従って計算します。ここでいう評価額は、不動産会社の売却査定額や購入価格と同じとは限りません。「購入額の何割」と一律に置かず、土地と建物を分けて求めます。出典:国税庁「土地家屋の評価」(2026年10月9日確認)。
土地の評価方法(路線価方式・倍率方式)
土地の評価方法は、地域によって2種類に分かれます。
| 評価方法 | 対象地域 | 評価額の求め方 |
|---|---|---|
| 路線価方式 | 市街地(路線価が設定されているエリア) | 路線価 × 地積(㎡) × 各種補正率 |
| 倍率方式 | 農村・郊外(路線価のないエリア) | 固定資産税評価額 × 倍率 |
路線価は毎年1月1日時点の価格を7月初旬に国税庁が公表します。単位は1㎡あたり千円で表示されており、たとえば「250C」と表示されていれば1㎡あたり25万円です。
路線価方式の計算例
東京都内の住宅地で次の条件の土地を相続する場合を想定します。
- 路線価: 30万円/㎡(「300D」と表示)
- 地積: 200㎡
- 形状: 整形地(補正率1.00)
相続税評価額 = 30万円 × 200㎡ × 1.00 = 6,000万円
不整形地(旗竿地・三角地など)は、形状や地区区分に応じた補正を検討します。減額率が一律に決まっているわけではありません。また間口が狭い土地は間口狭小補正率、奥行きが長い土地は奥行長大補正率が乗じられます。
建物(家屋)の評価方法
自己利用の戸建てなど、賃貸や区分所有財産の補正がない家屋は、固定資産税評価額で評価します。
建物の相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 1.0
固定資産税評価額は、市区町村から毎年送られてくる「固定資産税・都市計画税 納税通知書」に記載されています。固定資産評価証明書を役所で取得しても確認できます。
分譲マンションなどの居住用の区分所有財産を2024年1月1日以後に相続等で取得した場合は、土地部分と家屋部分のそれぞれに区分所有補正率を乗じる場合があります。対象外となる建物や補正不要の区分もあるため、国税庁の評価方法で適用を確認してください。以下の計算例は、自己利用の戸建てとその敷地を前提とします。
自宅(自用地・自用家屋)の評価
被相続人が自宅として使用していた土地は、自用地として路線価等に奥行きや形状等の補正を加えて評価します。自用地だから補正が不要という意味ではありません。一方、賃貸に出している土地・建物は評価が下がります(後述の貸家建付地)。
ステップ2: 基礎控除と課税遺産総額の計算
相続税の課税価格の合計から基礎控除を差し引いた金額が課税遺産総額です。課税価格では、不動産や預貯金だけでなく、みなし相続財産・加算対象の生前贈与、債務・葬式費用等も確認します。小規模宅地等の特例による評価減は、税額を求める前のこの段階で反映します。
基礎控除の計算式
基礎控除 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
| 5人 | 6,000万円 |
相続人が配偶者と子2人の計3人の場合、基礎控除は4,800万円です。不動産を含む全財産の評価額合計が4,800万円以下であれば、相続税は発生しません。
課税遺産総額の算出例
次の条件で課税遺産総額を計算します。
- 土地: 相続税評価額6,000万円
- 建物: 固定資産税評価額800万円
- 預貯金: 500万円
- 相続人: 配偶者 + 子2人(計3人)
| 財産 | 評価額 |
|---|---|
| 土地 | 6,000万円 |
| 建物 | 800万円 |
| 預貯金 | 500万円 |
| 合計 | 7,300万円 |
| 基礎控除(相続人3人) | △4,800万円 |
| 課税遺産総額 | 2,500万円 |
この例では課税遺産総額が2,500万円です。ここから法定相続分に応じた相続税額を計算し、実際の取得割合で按分します。
ステップ3: 相続税の税率と税額の計算
課税遺産総額を法定相続分で仮に分割し、それぞれの金額に税率をかけて各人の仮の税額を求めます。
相続税の速算表
| 法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | — |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
計算例(課税遺産総額2,500万円・相続人3人)
法定相続分: 配偶者1/2(1,250万円)、子各自1/4(625万円ずつ)
表は横にスクロールできます。
| 相続人 | 法定相続分額 | 税率 | 控除 | 仮の税額 |
|---|---|---|---|---|
| 配偶者 | 1,250万円 | 15% | 50万円 | 137.5万円 |
| 子(1人目) | 625万円 | 10% | — | 62.5万円 |
| 子(2人目) | 625万円 | 10% | — | 62.5万円 |
| 合計(相続税総額) | — | — | — | 262.5万円 |
相続税総額262.5万円を実際に取得した財産の割合で按分します。この例で配偶者が不動産をすべて取得し、子2人は預貯金を等分した場合、按分の詳細は実際の財産取得割合によって変わります。
ステップ4: 主要な控除・特例の適用
土地の評価額を減らす特例と、計算後の税額を軽減する制度を分けて確認します。小規模宅地等の特例はステップ2の課税価格に反映し、配偶者の税額軽減は実際の取得割合で配分した税額に適用します。
小規模宅地等の特例(最重要)
被相続人が住んでいた自宅の土地や、事業・貸付に使っていた土地について、一定の条件を満たす相続人が取得した場合、相続税評価額を大幅に減額できます。
| 区分 | 限度面積 | 評価減率 |
|---|---|---|
| 特定居住用宅地等(自宅) | 330㎡まで | 80%減額 |
| 特定事業用宅地等 | 400㎡まで | 80%減額 |
| 貸付事業用宅地等(賃貸物件等) | 200㎡まで | 50%減額 |
特定居住用宅地等の適用条件
被相続人の配偶者には、取得者に課される居住継続・保有継続の要件はありません。ただし、宅地自体が特例の対象であることや、申告等の手続きは必要です。同居の子が取得した場合は、相続開始前から同居していること、かつ相続開始後から申告期限(相続を知った日から10ヶ月)まで居住・保有することが条件です。
別居の子に適用される場合もありますが、「自分の持ち家がない」だけでは足りません。被相続人に配偶者や同居の相続人がいないこと、相続開始前3年以内の居住先の所有者、取得者が現在住む家を過去に所有していないこと、申告期限までの保有等を確認します。親族や関係法人の所有する家に住んでいた場合も判定に関わります。詳細は国税庁「小規模宅地等の特例」の取得者別の表で確認してください。
特例適用による節税効果(計算例)
先ほどの例で特例を適用した場合を計算します。
- 土地: 6,000万円の評価額(200㎡の自宅土地、330㎡以下のため全面積適用)
- 特例適用後の評価額: 6,000万円 × (1 − 80%) = 1,200万円
| 項目 | 特例なし | 特例あり |
|---|---|---|
| 土地評価額 | 6,000万円 | 1,200万円 |
| 全財産合計 | 7,300万円 | 2,500万円 |
| 基礎控除 | 4,800万円 | 4,800万円 |
| 課税遺産総額 | 2,500万円 | 0円 |
| 相続税総額 | 262.5万円 | 0円 |
自宅の土地が330㎡以内で、配偶者か同居の子が引き継ぐ場合は、相続税がゼロになるケースも多くあります。
配偶者の税額軽減
配偶者が取得した財産については、「法定相続分相当額」か「1億6,000万円」のいずれか大きい方まで、相続税が課税されません。配偶者がいる場合は、配偶者への財産配分を増やすことで、1次相続(親の相続)の税負担を大幅に減らせます。ただし2次相続(配偶者が亡くなるとき)の際に子への税負担が増える可能性もあるため、2次相続も含めた試算が重要です。
貸家建付地による評価減
土地に賃貸アパートや貸家を建てている場合、「貸家建付地」として評価します。評価減の割合は、借地権割合・借家権割合・賃貸割合で変わります。
貸家建付地評価額 = 自用地評価額 × (1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
借地権割合は地域によって異なり、路線価図または評価倍率表で確認します。借家権割合は全国一律30%です。賃貸割合は空室がない場合100%になります。
例: 自用地評価額6,000万円、借地権割合70%、借家権割合30%、賃貸割合100%の場合 評価額 = 6,000万円 × (1 − 0.70 × 0.30 × 1.00) = 6,000万円 × 0.79 = 4,740万円
賃貸経営の相続税評価圧縮効果については相続した土地の活用方法と判断軸でも解説しています。
遺産分割が終わらないまま申告期限を迎える場合
土地の分け方が決まらなくても、相続税の申告期限が自動で延びることはありません。未分割の財産は原則として法定相続分等で取得したものとして申告し、未分割の宅地には小規模宅地等の特例を適用せず計算します。「自宅だから80%減額できるはず」と見込んで納税資金を使い切らないことが大切です。
申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、原則として申告期限から3年以内に分割された場合は、特例の適用を受けて税額を計算し直せることがあります。税額が減る場合の更正の請求は、分割を知った日の翌日から4か月以内が原則です。必要な書類と期限は国税庁「相続財産が分割されていないときの申告」で確認できます(2026年10月9日確認)。
相談時は、土地の評価資料だけでなく、相続人の一覧、遺言書の有無、分割協議の進み具合、納付に使える現預金をまとめて持参します。評価額が確定するまで待つより、期限と納税資金を先に確認したほうが、使える手続きを選びやすくなります。
相続税の申告と納付期限
相続税の申告と納付は、相続を知った日の翌日から10ヶ月以内に行います。期限を過ぎると延滞税・加算税が発生するため注意が必要です。
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 相続税の申告 | 相続を知った日の翌日から10ヶ月以内 |
| 相続税の納付 | 原則として申告期限まで |
| 相続登記 | 相続による不動産の取得を知った日から原則3年以内。遺産分割後の登記等も別途確認 |
| 相続税の取得費加算特例の対象期間 | 相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで |
不動産が相続財産の多くを占める場合、現金が不足して相続税を納めにくいケースがあります。そのような場合は「延納(分割払い)」や「物納(不動産で納める)」の制度を利用できますが、要件が厳しく手続きも複雑なため、税理士への相談を早めに行うことをお勧めします。
相続後に不動産を売却して納税資金を確保する方法もあります。「相続税の取得費加算の特例」を使えば、所定の期間内の売却で支払った相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得税を圧縮できます。売却時の税金の計算方法は相続した土地の売却税金で詳しく解説しています。
不動産の相続手続き(相続登記の流れや必要書類)については不動産の相続手続きを自分でする方法で整理しています。また相続した土地をどのように活用するかの判断軸は相続した土地の活用方法と判断軸、活用の相談先の選び方は土地活用の相談先と選び方でそれぞれ確認できます。
相続税がかかるかどうかを簡単に確認する方法は?
まず基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を計算し、全財産の評価額合計と比較します。合計が基礎控除を下回れば相続税は発生しません。不動産については路線価(国税庁のウェブサイトで検索可能)を使って概算評価額を計算できます。ただし補正率や特例の適用可否は個別事情によって変わるため、基礎控除を超えそうな場合は税理士への相談を推奨します。
小規模宅地等の特例は、申告しないと適用されませんか?
小規模宅地等の特例は、相続税の申告書に適用を受ける旨の記載が必要で、申告なしには適用されません。たとえ評価額が基礎控除以下になったとしても、特例を適用する場合は必ず申告書を提出する必要があります。申告期限(相続を知った日から10ヶ月)を過ぎると特例の適用が認められなくなる場合があるため、早めに手続きを開始することが重要です。
路線価が毎年変わると相続税評価額も変わりますか?
路線価は毎年1月1日時点の価格をもとに更新されます。相続税評価額の計算に使う路線価は「相続が発生した年」の路線価です。亡くなった方が1月1日以降12月31日までに亡くなった場合、その年の路線価(7月初旬に公表)で計算します。2020年以降は地価上昇エリアで路線価が上昇傾向にあり、評価額が増えているケースも多くなっています。
相続税を自分で計算・申告することはできますか?
財産が少なく相続人間の争いがなければ、自分で計算・申告することは可能です。国税庁は申告書のひな形や計算シートを公開しており、「e-Tax」を使えばオンラインでも申告できます。ただし小規模宅地等の特例の適用、複数の不動産評価、2次相続の影響など、判断が難しい要素が重なる場合は税理士に依頼する方が確実です。税理士報酬は相続財産の総額や申告の複雑さによって異なりますが、1回の申告で15万〜50万円程度が目安です。
評価額と申告の要否をそろえて確認する
不動産の相続税計算は、評価額の算出・基礎控除の確認・特例の適用という順番で進めます。自宅を相続する場合は小規模宅地等の特例(330㎡まで80%減額)の適用条件を確認することが最重要です。配偶者の税額軽減と組み合わせると、多くの家庭では相続税がゼロまたは大幅に減額になります。
相続税の申告期限は「相続を知った日から10ヶ月」です。不動産の評価や特例の判定は専門的な判断が必要なケースが多いため、評価額の合計が基礎控除に近い場合や特例の適用を検討する場合は、早めに税理士へ相談することを推奨します。