執筆: 家づくりナビ編集部
編集・確認: 株式会社ローカルマーケティングパートナーズ (最終確認: )
注文住宅の支払いスケジュール — 契約から引き渡しまでのお金の流れ
注文住宅の支払いスケジュールは、建売住宅やマンションとは大きく異なります。建売なら契約時と引き渡し時の2回で済むところ、注文住宅では土地の購入から建物の完成まで4段階以上に分かれて支払いが発生します。しかも、住宅ローンの融資実行は建物完成後が原則です。完成前に必要な資金をどう手当てするかが、注文住宅の資金計画で最もつまずきやすいポイントです。
この記事では、注文住宅の支払いスケジュールを契約前から引き渡しまで時系列で整理し、各段階の支払い金額の目安、つなぎ融資の仕組み、建売との資金フローの違い、そして実際の12ヶ月スケジュール例まで解説します。
注文住宅の支払いは4段階に分かれる
注文住宅の建築費用は、工事の進捗に応じて分割で支払うのが一般的です。一括払いではなく、工務店やハウスメーカーが工事を進めるための原資として段階的に資金を受け取る仕組みになっています。
各段階の支払い割合は住宅会社によって異なりますが、よく見られるパターンを表にまとめます。建物価格3,000万円を想定した金額も併記します。
| 段階 | タイミング | 割合の目安 | 金額目安(3,000万円の場合) |
|---|---|---|---|
| 着工金 | 着工前 | 建物価格の約10% | 300万円 |
| 上棟金(中間金) | 上棟時 | 建物価格の約30% | 900万円 |
| 中間金(2回目) | 内装工事着手時 | 建物価格の約30% | 900万円 |
| 完成引渡金 | 引き渡し時 | 建物価格の約30% | 900万円 |
会社によっては中間金を1回にまとめて「着工金10%・中間金30%・完成金60%」としたり、「着工金30%・中間金30%・完成金40%」としたりするケースもあります。契約前に支払い条件を書面で確認することが重要です。
ここに土地の購入費用が加わると、支払いのタイムラインはさらに複雑になります。注文住宅の流れでも全体のプロセスを解説していますが、資金面に絞って見ると次のような順序になります。
土地購入時の支払い
土地を先に購入する場合、建物の着工よりも前に土地代金の決済が必要です。土地の支払いは通常、2段階に分かれます。
手付金は売買契約時に支払います。土地価格の5%から10%が目安です。2,000万円の土地なら100万円から200万円です。手付金は契約の履行を担保するためのもので、自己資金(貯蓄)から出すのが原則です。
残代金は土地の引き渡し(所有権移転)時に支払います。土地代金から手付金を差し引いた残額で、ここで初めて住宅ローン(土地先行融資分)またはつなぎ融資の資金が使われます。
土地の残代金決済と同時に、不動産取得税や登記費用、仲介手数料(土地価格の3%+6万円+消費税)などの諸費用も発生します。土地購入にかかる諸費用は土地代金の6%から10%程度を見込んでおくと安全です。
着工から完成までの支払い
土地を取得した後、建物の設計・確認申請を経て着工に進みます。ここから建物完成までの支払いが本格的に始まります。
着工金は工事の開始前に支払います。金額は建物価格の10%から30%で、ハウスメーカーや工務店によって設定が異なります。中小の工務店では材料の仕入れ資金として着工前にまとまった額を求められるケースが多く、大手ハウスメーカーでは着工金の割合が低い代わりに中間金の比率が高い傾向があります。
上棟金(中間金)は建物の骨組みが立ち上がった段階(上棟)で支払います。木造在来工法では棟上げ式(上棟式)のタイミングと重なります。着工から上棟までは通常1ヶ月から2ヶ月程度です。
その後の中間金は内装工事が進む段階で支払い、最終の完成引渡金は建物が完成して引き渡しを受ける時点で精算します。完成引渡時には住宅ローンの融資が実行されるため、ここで初めて住宅ローンの資金を充当できます。
問題は、着工金から中間金までの支払いが建物完成前に発生することです。住宅ローンは完成した建物を担保に融資するのが原則のため、建物が未完成の段階では融資実行されないのが一般的です。この「完成前の資金ギャップ」を埋めるのが、つなぎ融資です。
つなぎ融資の仕組み
つなぎ融資は、住宅ローンの融資実行までの間、建築中に必要な資金を一時的に借りる仕組みです。「つなぎ」という名称のとおり、住宅ローンが出るまでの間をつなぐ短期融資です。
つなぎ融資の基本的な流れを整理します。住宅ローンの本審査が通った段階で、金融機関につなぎ融資を申し込みます。つなぎ融資が承認されると、着工金の支払いタイミングに合わせて1回目の融資が実行されます。以降、中間金の支払い時に2回目、3回目と追加融資を受けます。建物が完成して住宅ローンが実行された時点で、つなぎ融資の元金と利息をまとめて清算する流れです。
| 融資回 | タイミング | 融資額の目安 |
|---|---|---|
| 1回目 | 土地残代金決済 | 土地代金の残額 |
| 2回目 | 着工時 | 建物価格の10%〜30% |
| 3回目 | 上棟時 | 建物価格の30% |
| 住宅ローン実行 | 引渡時 | つなぎ融資を一括精算 |
つなぎ融資のコストは見落としやすいポイントです。つなぎ融資の金利は住宅ローンより高く、年2%から4%程度が一般的です。仮に2,000万円を6ヶ月間、金利3%で借りた場合、利息は約30万円になります。これに加えて事務手数料(10万円前後)や印紙代がかかるため、つなぎ融資全体で50万円から100万円程度のコストを見込む必要があります。
つなぎ融資の利息は建築期間が延びるほど膨らみます。工事の遅延は珍しくなく、天候不順や資材の納期遅れで1ヶ月から2ヶ月延びることもあります。工期延長のリスクも資金計画に織り込んでおくべきです。
一部の金融機関では、住宅ローンの融資を建物完成前の段階から分割で実行する「分割融資」や「土地先行融資」に対応しています。つなぎ融資より金利が低い場合があるため、利用可能な金融機関があれば比較検討する価値があります。住宅ローン全般の基礎知識は住宅ローンの基礎知識で体系的にまとめています。
建売住宅との支払いフローの違い
注文住宅と建売住宅では、支払いの回数とタイミングが根本的に異なります。この違いを理解しておくと、注文住宅の資金計画の特殊さがよくわかります。
建売住宅は完成済みの物件を購入するため、支払いは原則2回です。売買契約時に手付金(物件価格の5%から10%)を支払い、引き渡し時に残代金を住宅ローンで一括決済します。つなぎ融資は不要で、手付金以外は住宅ローンでカバーできるシンプルな資金フローです。
| 項目 | 注文住宅 | 建売住宅 |
|---|---|---|
| 支払い回数 | 4回以上(土地+着工+中間+完成) | 2回(手付金+残代金) |
| つなぎ融資 | ほぼ必須 | 原則不要 |
| 自己資金の必要額 | 多い(手付金+諸費用+つなぎ利息) | 少ない(手付金+諸費用) |
| 資金計画の複雑さ | 高い | 低い |
| 住宅ローン開始時期 | 引渡後(着工から半年〜1年後) | 引渡後(契約から1〜2ヶ月後) |
注文住宅は建売と比べて自己資金の必要額が多くなります。土地の手付金、建物の諸費用、つなぎ融資の利息と手数料を合わせると、総額の10%から15%程度の自己資金が必要になるのが一般的です。建物価格3,000万円+土地2,000万円=総額5,000万円の場合、500万円から750万円の自己資金が目安です。
12ヶ月スケジュール例
土地探しから引き渡しまでの典型的な12ヶ月スケジュールと、各段階で発生する支払いを時系列で示します。建物価格3,000万円・土地2,000万円を前提にした概算例です。
1ヶ月目から2ヶ月目は土地の選定と売買契約の段階です。気に入った土地が見つかったら買付証明書を提出し、売買契約を結びます。この時点で土地の手付金を支払います。同時に住宅ローンの事前審査を申し込みます。
3ヶ月目は土地の残代金決済です。住宅ローンの土地先行融資またはつなぎ融資1回目で、土地代金の残額を支払います。所有権移転登記、不動産取得税、仲介手数料なども発生し、諸費用として150万円から200万円程度がかかります。
4ヶ月目から5ヶ月目は設計・プラン確定の期間です。間取りや仕様の打ち合わせを重ね、建築確認申請を提出します。この期間は大きな支出はありませんが、地盤調査費(5万円から15万円)や設計料の一部が前払いになる場合があります。注文住宅の打ち合わせの進め方は注文住宅の流れで解説しています。
6ヶ月目は着工です。着工金として建物価格の10%程度を支払います。つなぎ融資の2回目で対応します。
8ヶ月目は上棟です。上棟金(中間金)として建物価格の一部を支払います。つなぎ融資の3回目です。この段階で建物の外観がほぼ完成し、内装工事が始まります。
10ヶ月目から11ヶ月目は内装工事・設備工事の段階です。会社によってはこの段階で2回目の中間金が発生します。施主検査(完成前の確認検査)を行い、手直しがあれば修正を依頼します。
12ヶ月目は完成・引渡しです。住宅ローンの融資が実行され、完成引渡金の残額とつなぎ融資の精算を行います。同時に建物の登記費用、火災保険料、住宅ローンの保証料・事務手数料などの諸費用が発生します。
| 月 | イベント | 支出項目 | 概算金額 |
|---|---|---|---|
| 1〜2 | 土地契約 | 手付金 | 200万円 |
| 3 | 土地決済 | 残代金+諸費用 | 土地代の残額+諸費用 |
| 6 | 着工 | 着工金 | 建物価格の一部 |
| 8 | 上棟 | 中間金 | 契約条件による |
| 12 | 引渡 | 完成金+諸費用 | 融資実行額から精算 |
住宅ローンの返済はいつから始まるか
注文住宅の場合、住宅ローンの返済が始まるのは建物が完成して融資が実行された翌月からです。着工から完成まで半年かかるとすれば、土地を購入してから住宅ローンの返済が始まるまで約9ヶ月から12ヶ月のタイムラグがあります。
このタイムラグの間、つなぎ融資を利用している場合はつなぎ融資の利息が発生しています。賃貸住まいの場合は家賃の支払いも続きます。つまり、建築中は「家賃+つなぎ利息」の二重負担が発生する期間です。
建物価格3,000万円のつなぎ融資(金利3%、6ヶ月間)と月8万円の家賃が重なると、建築期間中の追加負担は約78万円(つなぎ利息約30万円+家賃6ヶ月約48万円)になります。この費用を資金計画に入れ忘れると、引き渡し時に手元資金が想定より少なくなるため注意が必要です。
支払いスケジュールに合わせた資金計画のコツ
注文住宅の支払いスケジュールを踏まえた資金計画で押さえるべきポイントを整理します。
自己資金は総額の15%を目安に準備するのが安全です。土地の手付金、建物の諸費用、つなぎ融資のコスト、引っ越し費用、家具家電の購入費まで含めると、総額の10%では足りないケースが多くなります。5,000万円の家づくりなら750万円程度の自己資金を見込んでおくと、支払いの各段階で資金繰りに余裕を持てます。
つなぎ融資の金利と手数料を事前に比較することも重要です。つなぎ融資の条件は金融機関ごとに異なり、金利差が1%あるだけで数十万円の差になります。住宅ローンの金利だけでなく、つなぎ融資のトータルコストも含めて金融機関を選ぶ視点が必要です。
工期延長のリスクを織り込むことも忘れてはいけません。天候不順、資材の納期遅れ、設計変更の追加打ち合わせなどで、当初予定より1ヶ月から3ヶ月延びることは珍しくありません。つなぎ融資の利息は日割りで加算されるため、工期延長分のコスト増を予算の余白として確保しておきましょう。
注文住宅の費用内訳で建築費用の全体像を確認しておくと、支払いスケジュールの各段階でどの費用項目が発生するかを把握しやすくなります。
よくある質問
つなぎ融資を使わずに注文住宅を建てる方法はありますか。
自己資金で着工金・中間金をまかなえるなら、つなぎ融資は不要です。また、一部の金融機関では住宅ローンの分割融資に対応しており、建物完成前でも融資を段階的に実行してもらえます。分割融資はつなぎ融資より金利が低い場合があるため、利用可能な金融機関を探す価値はあります。
着工金や中間金の割合は交渉できますか。
住宅会社によっては交渉の余地があります。大手ハウスメーカーは支払い条件がパッケージ化されており変更しにくい傾向がありますが、地域の工務店では相談に応じてくれるケースもあります。ただし、着工金の割合を極端に下げると工務店側の資金繰りに影響するため、双方にとって無理のない範囲で調整しましょう。
注文住宅の支払いで住宅ローン控除はいつから適用されますか。
住宅ローン控除は、建物が完成して引き渡しを受け、実際に居住を開始した年から適用されます。つなぎ融資の利息は住宅ローン控除の対象外です。入居年の翌年に確定申告を行い、翌年以降は年末調整で適用を受ける流れになります。
複数社の資金計画を比較して支払いの全体像を把握する
注文住宅の支払いスケジュールは、土地購入時・着工時・上棟時・完成引渡時の4段階に分かれ、建物完成前の支払いにはつなぎ融資が必要になるのが一般的です。建売住宅と比べて自己資金の必要額が多く、資金計画の複雑さも上がります。
支払いスケジュールの具体的な条件は、依頼するハウスメーカーや工務店によって異なります。着工金・中間金の割合、つなぎ融資の取扱い、工期の見通しを含めた資金計画は、複数社から提案を受けて比較するのが確実です。
出典
- 住宅金融支援機構「フラット35利用者調査」
- 国土交通省「令和5年度 住宅市場動向調査」